金環日蝕

※エレクトロニカ・アーティストの Asuka Tanaka による、今回の金環日蝕をテーマにした楽曲

今日は金環日蝕でしたね。

ワタシは築地にある、某病院前の交差点で観ました。見晴らしが良かったとは決して言えないんですけれども。

初めて観た金環日食は、でも、思ったよりも全然暗くならなくて。ちょっとイメージと違っていた。ただ、夕暮れでも朝焼けでもない、おそらくたぶん、日蝕のときにしかあり得ないような微妙な陰りが街を覆っていて、月並みな言い方ですけど、非常に幻想的な雰囲気でした。用意していた観測用グラスが、目を守りすぎて(笑)、全ッ然観られなくて、一緒に観ていた人とか、偶然通りかかった人とかと、「これよく見えるよ!」なんて言いながら、グラス交換したり。それでも、本当はダメなんだけど、やっぱ肉眼で観ちゃって。丁度食の最大のときには、雲がいい具合に薄ーくかかってて、それでかえってくっきり観えて。本当にあれ、指輪だ。空に指輪が浮かんでいて、絶対に手に取ることのできない。

たぶん、金環日蝕を観ることなんて、今後二度とないんだろうから、あの瞬間はずっと、ずーっと覚えている。もう、本当。網膜に焼き付いているかもしれない、っていうくらい。

といういうわけで、ワタシもご多分に漏れず、前々から非ッ常~に楽しみにしておりまして、何と言ってもこれのために       くらいで。いやー、思い入れの度合いは人それぞれでしょうけれども、理由は分からないんですが、幼少の頃から、けっこう星とかそういうの好きで。とにかく是非とも見たい! 3年前の皆既日蝕のときは仕事で・・・、うー、みたいな。でも日本で観られる地域は雨降ってざまあw みたいな。そういう悪しき心が芽生えるくらい、もう、本当、これ観られなかったら死んでも死にきれないというか、逆に言うと、観られたら死んでもえいかな、まあ、でも、2035年の皆既日食(「日本で見られる皆既日食」、「日本で見られる金環日食」を参照)までは生きるか、あー、あと23年も生きなあかんのか~、もうジジイやなあ、という気持ちだったわけです。

ということで、せっかく観るんだったら、自分なりにちゃんと環境を整えてですね。できればすっごいリラックスした状態で、浜辺にでも寝っ転がって悠々と、ビールでも呑みながら・・・、と計画を立てていたわけです。

そうだなあ、ワタシの住んでいる近くの海っていうと、神奈川まで出ないといけないけれども。自転車好きだから自転車で行ける範囲で、というと、ちょっと方角、つまりちゃんと東向いて寝っ転がれる場所を探さないといけないけど、お台場とかどうだろう、ここなら1時間くらいでいけるしなあ。とか。台場公園の、本当はダメだし浜辺でもないんだけど、あの、柵を越えてあの、草が茂っているところとかね、いいんじゃないの。そこで寝っ転がりながら。食の入りが6時過ぎだから、余裕をみて4時過ぎには家を出て、ということは、3時くらいには起きたい、じゃあ、前日の22時くらいには寝よう、と。実際に寝たわけですよ。そして起きたわけですよ。で、ちゃんと予定通りに出発したわけですよ。

ちょっと待て、あんた病院の近くで観たんでしょ? お台場どうした? という話になると思いますが、とりあえずですね、そうですねー、5時くらいですかねー、そのときの BGM が Sergio Mendes の楽曲だったので、こっからしばらく、以下の2曲を聴きながらお読みいただきたいのですが。



いやー、いいですよね、セルメン。この5月の丁度、過ごしやすい時期にぴったりですよね~、もうちょっと暑くなっても似つかわしいんですが。

で、話を戻して、それで。海岸通りから浜離宮のところで新大橋通り、そっから築地市場の前を通って晴海通りへ、あとは通なりに~、という経路を予想して、順調に自転車を走らせていたわけです。

と こ ろ が !

どの辺ですかねー、もうすぐ浜離宮見えて新大橋通りや、っていう寄りの海岸通りですかね。海岸通りってずーっと直線で信号もほとんどないんで、自転車でもけっこうスピード出してうぇーい! って調子乗ってたらバッチーン音がしまして。いきなり。その瞬間ペダルを漕ぐ感覚がふぁーってなくなって。ふくらはぎあたりに急痛が走りまして。イテテテテテッってなって、そしたら案の定。チェーン外れてまして。もうー、こんなところで時間ロスしたくないのに~、早くお台場行きたいのに~、って思って自転車を歩道の端の方に寄せているときに目にしたくないものが目に入りまして。血がドッバーって。

ふくらはぎから血がドッバーって流れていたんですよ。傷口付近にはチェーンの後がビッチリついてて。あ、これが流血かと(笑) でもあんま痛くないし、そのうち止まるやろう思って、とりあえず「手が汚れるのいややなあ」「近くのコンビニで絆創膏買って貼るか~、ついでにお手洗い借りられたら借りて傷口洗おう」とか考えながら、チェーンはめて。

で、ちょっとスピード落として再出発したわけです。「ついてないなあ、間に合うかなあ、何で今日こんなことになるかなあ」とか思いながら。

でもですね、血が一向に止まらない(笑) ちょうど新大橋通りに入ったところにコンビニがあって、「よし、ここでお手洗い借りて傷口ちょっと洗おう」と思って入ったんですけどお手洗いを貸してくれなくてですね。「手だけでも洗わせて欲しい」とバイトの兄ちゃんに頼んだんですけど、断られまして(笑)、いやー、彼のことはイッショウ忘れませんよ(笑)、何だって今日は金環日蝕だったからねえ! ははは! と、絆創膏とかウェットティッシュとか水とか買ってですね。コンビニの前の歩道で傷口に水を流してウェットティッシュで拭いて絆創膏貼ってってするために、まあ、したんですけど。スニーカー脱いだら靴底真っ赤で。まるで最初からそういうデザインだったかのように。

「あー、これはアカンわー、病院行った方が良いのかなあ」

と思いつつ。

しかし今日は金環日蝕! 絆創膏貼ったし。2枚。これで行けるやろう! ということで再々出発したんですがしばらくしたらその貼った絆創膏の上から血が噴き出しまして(笑) いや、まだ行ける。と、勝どき橋のところくらいまで頑張って行ったわけですよ。でもだんだん、あ、右足だったんですけど、血が流れてたの。その右足が痺れてきているような気がしてきて、何か頭もボーッとするし、これが出血多量というかいきなり血が抜かれたときの感覚なのかなあ、とか、まー、本当にヤバいのと比べたら多分、全然大したことないんでしょうけど、やっぱ血がだらだらじゃなくて、ドバドバ出ているし。月曜の朝でしょ? 5時半前ですかね。割と人もいて。出勤中の人とか。散歩している人とか。市場の人とか。で、もう、不安になって。情けないことに(笑) 決定的だったのが、傷口の直ぐ下が変に膨らんでいて、「これ、もしかして石とか入っているんちゃうかな・・・」ていう。それで、近くを通っていたおばさまに、あ、勝どき橋を渡る直前だったんですけど。

「すみません、このへんに救急病院ってありますか? ちょっと足が」

「ヒィッ!」

「なかったら自分で救急車呼ぶので」

「あー、あー、橋を渡って大通りがあるので、そこを右に曲がってしばらくいったところに・・・」

「橋渡るんすか!?」

「そうねえ、でも、この時間だしやってくれるかしら・・・」

「橋渡るのか・・・」

と、ワタシは、この流血した足で勝どき橋を渡らねばならぬかもしれないことに、さらに不安になったんですけど、

「あ、でも、そこを右に曲がってスグ、左に○○が」

「○○○?」

「うん、○○○病院っていう大きな病院」

「○○○ですか」

「やってくれるかどうか分からないけど、この時間だし・・・」

「右に曲がってスグですね。ありがとうございます」

と、いうことで、聞いたことのない病院に向けて、来た道を戻ったわけです。

あとで調べて分かったんですが、かんなり有名な病院でした。

で、全然曲がってスグではなかったんですけれども(笑)、しばらく自転車を走らせるとそれらしき建物が見えまして。うろ覚えですけど病院の名前を冠した道もあってスゴいなあ、ていう。

それで着いて夜間の入り口から入って救急の外来の受付に行って、「血が止まらないんですけど」という説明をして(笑)、受付の人はちょっと愛想ない感じで、大丈夫かなあ、この病院と思ったんですが、奥から出てきた看護師さん? がすっごいやさしくて。「じゃあ、車椅子乗りましょうか」っていう。

いやいやいやいや、そんーっな大げさなものでもないんですけど、と思いつつ、ただ、まあ、ここであれこれ言い返せないんで、大人しく車椅子乗って。小5のときに骨折したときっぶりですよ。あれね、大人になって改めて乗ると、けっこう怖いっすね。押してくれて。ナースが。

そんで、救急の外来の治療室みたいなところ行って、ベッドに寝かされて。何かもう、6時前くらいで。

「今先生来ますからね~」

ってすっごい優しくナースが声をかけてくれて。で、これくらいから、

(もしかしてここ、めっちゃちゃんとした病院なんじゃ? 治療費とかかなり高いんじゃ・・・)

と、いらん考えが頭を過りまして。

まあ、治療費はね、あとで調べて分かったんですけど、救急の外来とかは別にどこも一緒みたいですね。

ただまあ、このときはまだ楽観的だったというか、とりあえず病院に着いたし、止血程度だから直ぐ済むでしょう、包帯巻いて。6時前かあ、食の入りにはギリギリかなあ。お台場着くくらいに丁度金環かなあ。とか。

それで、お医者さん来て。若い。たぶん20代前半で、ワタシより年下の。ネームプレート見たら「研修医」で。おいおい、大丈夫か、と思いつつ。で、ナースといろいろ相談されながら、傷口洗って触られてイタタタタ! ってなってその度にナースが「大丈夫ですか~」って声を掛けてくれて。それで、傷口の直ぐ下のボコってなってるんですよ、っていうのを言うと、「念のためレントゲンを撮ります」って。あれ? 何か話が何かでかくなってない? で、車椅子に乗って移動とかいう話なんですけど、足に負担はかけられない、ということで、ベッドのままレントゲン室に(笑)、あれ~、すっごい大袈裟ですけど~、っていう。

それでレントゲン撮り終わって何も言ってこなかったから多分、傷口に石が入っているとかそういうのはなかったんだろうけど、

「4箇所に傷があります。そのうち3箇所はけっこう深い。縫わなければなりません。1箇所は肉が見えてますんで」

「はあ、縫う。ということは、またここに来ないといけない?」

「そうですね、抜糸のときだけではなく、傷口の経過を看るために明日と、あと抜糸のために1週間後」

「え?」

「あと、おそらくチェーンが当たって傷ができたので、傷口が汚れてます。破傷風菌の予防接種はしたことありますか?」

「ないっすね」

「では、その破傷風菌の予防接種も必要ですね」

「え?」

という具合にですね。めちゃくちゃ大袈裟な話になってしまったわけです。こっちはだって、消毒してもらって包帯巻いてもらって終わりくらいの気持ちで来てましたから。もうその時点で6時半過ぎとかで。あー、これ、ちゃんと観られなかったなあ、日蝕。でも、金環のときは絶対! 間に合うはず! と。それからまあ、傷口に麻酔打たれてアギャーっていう感じだったんですけど、その度にナースが「大丈夫ですかあ」て声をかけてくれて、若い研修医の兄ちゃんも一生懸命縫ってくれて(当たり前ですけど)、結局5針くらい縫ったんですかね? それで、一通り終わって、もう7時前。そしたらその、救急のところにいるお医者さんとかナースとかが、

「7時半くらいですよね?」

「欠けてた欠けてた」

「ちょっと研究に(笑) 外に行って来まーす」

とか喋っているわけですよ! うわ、こいつら観に行ってる・・・、っていう(笑) これ、もしかして金環のときに間に合わないんじゃないか・・・、と。

で、ワタシの縫合を終えた研修医にも、別のお医者さんが話しかけたりして、

「見た?」

「いや、僕観れてないんですよ。メガネ買ったんですけど」

「あ、俺らね、さっきあそこの交差点で観てきた」

とか聞こえてきて、おいおいおいおい! っていう。

そんで、注射も打ったし、7時15分くらいですかね。ちょっと落ち着いてきたので、「日蝕観えますかね」て、施術していただいた研修医に声を掛けたら、「今、そうみたいですよ。観に行きます?」って。

「じゃあ、観に行きましょうか」

「え? いいんですか?」

「僕、観たかったんですよ、メガネもあるし」

「いや、ワタシも実は(笑) 観に行く途中だったんすよ」

「そうなんですかぁ!? 丁度良かった」

「すみません、ワタシのせいでもう少しで観られないところでしたよね」

「いえいえ。」

みたいな。まあ、何が「丁度良かった」のかはよく分かりませんがで! でだ! その、看てくれた研修医さん、めっちゃ良い人でしたよ、あらゆる前言撤回! 観に行きましたよ! 他のお医者さんとかナースさんとかとも一緒に! それでこのエントリーの冒頭に戻るんですけれども!

病院の近くの交差点で。白衣を着たお医者さん・ナースに囲まれて。どこの馬の骨か知らぬワタシが日蝕グラス出して。

「おー! 観えますね!」

「そっちのメガネどうですか?」

「こっちの方が良い感じですね!」

とか。ワタシを施術してくれた研修医さんなんかは、

「僕、2つ持っているんですよ、メガネ。一個貸しましょうか?」

っていう(笑) いやー、本ッ当にすみません(笑) ワタシのようなテキト—な人間のせいで危うくその2つの日蝕グラスが無駄になるところでしたね・・・、それで。出勤してきたお医者さんも集まってきて、全く関係ない通勤途中のオッサンとかとも一緒に、「すげー」って。そんでそのオッサンから「このグラス、めっちゃいいですよ」て貸してもらったり。

「これ、誰に借りたんですか?」

「全然知らない人です」

みたいな。

「さっき来た患者さんと一緒に観てるんです」

「もう大丈夫なんすか?」

って。まぁ、なかなかここで大丈夫ですとは言い難いんですけど(笑) それで、面白いのがですね、けっこう偉い手っぽいお医者さんとかがですね、おじさまみたいな感じの。下敷きで観てたっていう(笑) あんた、医者ちゃうんかい!(笑) みたいな(笑)

「いやー、眼科の○○クンに叱られるなあ。ははは!」

とか言ってるし。そのうち他のお医者さん、ナースの方々なんかが、裸眼で観始めて(笑)

「雲がいい具合なんで裸眼でも分かりますねえ」

とか言って(笑) 禁止されていることを医者が率先してやってどうすんの!? っていう(笑)

ということで、じーっくり観察とはいきませんでしたが、無事観ることができました。

食の最大も過ぎた頃、「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」と、言われたので、院内に戻りました。戻り際、日蝕グラスを持っていない出勤途中の女性に、「どうぞ」っつってグラスを差し上げて。

「どこで観る予定だったんですか?」

「いや、ちょっとお台場まで」

「あー、じゃあ、見晴らしは悪いですけど。でも記憶には残りますね」

「そうですね(笑)」

それで無事ー、えー、病院を後にしてですね。けっきょく8時半前くらいまでかかったんですけど。「本当に朝早くご迷惑おかけしました」ということで。ただ。やっぱ腹の虫が治まらないというか。これがですね、何がツラいのかというと、また自転車で帰らなければならないという。自転車で怪我してまた自転車で帰らなければならない。そんで、やっぱ、痛いわけではないんですけど、力が入らない。このまま帰るか? いや、それはなあ、そもそも帰れるのか、というのもあるんですけど、くっそー、何で今日。全くついてない。何でこのタイミングで・・・、と無念がこみあげてきて。でですね、けっきょく、お台場に行きました。怪我したその足で。自転車で(笑)

そんで、そのときの写真がコレです。微グロ注意。

このね、真っ白いナイキのスニーカーのですね、内側が全ッ部真っ赤になってるんですけど。血です。血。もうこういうデザインかと思ってしまうんですが。

しっかし、「21日の夜は金環日蝕について書くぞー!」と意気込んで、 BGM も偶然、なかなか良いのがあって、さー! と思っていたんですが、こんな内容になるとは思いませんでした。

いやー、でも本当にねー、観れて良かったっすよ、これで観られなかったら本当、ずーっと後悔しつづけているでしょうから。

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コメント

  1. snow より:

    なんか、すごい体験でしたね
    でも読んでる方はすごく面白いです
    靴もなんだかかっこいいし、めでたしめでたし!

  2. Xnaga Yuzo より:

    めでたし? なのか!?
    まー、読んでいる方が面白かったらそれで良いです : )